私たち「くりこまくんえん」では、燻煙処理で乾燥させた木材を取り扱っています。燻煙処理のための燃料も、木材の端材や木の皮など自然素材を利用しています。現在、世間一般の木材の乾燥方法は、高温乾燥が主流です。しかし、この方法は急激な乾燥によって木材の繊維を破壊し、内部割れを起こす可能性があります。そうすると、強度に問題が生じてしまうのです。一方、低温で10日間ほど時間をかける燻煙処理は、表面には割れが生じますが、内部割れは起こりません。それが「くりこまくんえん」のこだわりです。
そんな私たちと、エコラ倶楽部の理事長であり、「アトリエデフ」の代表を務める大井さんとの出会いは、2004年でした。「アトリエデフ」の家づくりに使う構造材として、自然素材の国産材で、なおかつ薬剤を使っていない木材を大井さんが探していたことがきっかけです。当時から私たちは人工乾燥ではない燻煙処理乾燥に取り組んでいましたが、国産材に限らず、外材も扱っていました。しかし、外材も薬剤も使用しない会社と取引がしたいとの大井さんの思いに共感し、以来、一切そうした材料は使わず、20年近くお付き合いをしています。
大井さんとの出会いがなければ、私たちは価格競争だけに走り、自分たちで自分たちの首を絞め、大手製材所に負けてしまう状況に陥っていたことでしょう。自社の独特の技術とこだわりで他社に対抗する。そうした強い思いをもった現在の「くりこまくんえん」があるのは、大井さんとの出会いがあったからこそです。ときには意見がぶつかることもありましたが、進む方向は同じだからこそ、よりよいかたちで進んでいけていると感じます。
そのような出会いを経て、森林整備をして健康で豊かな森を各県に広めようとの思いで工務店が集まり、エコラ倶楽部が立ち上がりました。いま、荒れた山が国内に数多くありますが、私たちは木材を扱っている以上、もっと森に手をかけなければいけません。それが、エコラ倶楽部に寄せる私の思いです。
いまは原村の「エコラの森」での活動のほかに、私たちが暮らす宮城県にある「エコラの森」や「みらいの森」でも、間伐や下草刈りなど年数回の活動を進めています。宮城県では国有林の分収林契約を結び、自分たちの手で植林して手入れをはじめてから17年ほどが経ちました。森の中に日が差し込み、下草が生えはじめ、木々の成長が感じられます。それがいまの一番の達成感であり、やりがいです。契約が満了する60年後には、私たちは生きていないでしょう。しかし、その森を若い世代に引き継いでもらえたら。そんなことを願いつつ、山がきれいになっていくことが喜びです。
現在はウッドショックや木質バイオマス発電の燃料である木質ペレットの輸入停止など、国内の森にまつわるさまざまな問題が浮上しています。でも、森を次世代に引き継ぐためには、私たちは活動を絶やすことはできません。とにかく森を整備し、次の世代に渡すこと。それこそが私たちの役割です。